私たちは、幸いに生を受け、育ち、刻々と流れる時間の中を生きています。年を重ねて変化する身体や精神、そして、実現しなかった事、おそらくは実現しない事も含め、受容しながら強く生きていくのだと思います。生きる事はあたかも、風の中で呼吸し続ける、そのように思えるのです。
　作品には、福島県いわき市生木葉ファームで採取した芥子菜の種を使用しています。この種は、平成２２年福島第一原発事故前、ファームで最後に採取されたもので、事故後に採取された１kgもの芥子菜の種は処分されました。また、事故後に芥子菜の栽培は行っていません。
　震災後、何度か生木葉ファームに足を運びお話を伺い、頂いた種を基に生命を主題にした作品を構想しました。被災地の農家の受けた影響と苦しみを知り、種の放射線影響の有無を意識しながら制作しました。